不思議な楽器がやってきた:プサルテリー

今日は珍しい楽器が教室を訪問してくれました。
上の写真の右側、「プサルテリー」という楽器です。
チェンバロ教室の生徒さんが、最近入手された物を持って来てくださったのですが、私も実際に見るのははじめてでした。
インパクトのある姿です。

たくさんの弦がはってありますが、バイオリンのように弦を左手の指で押さえて音を作る必要が無い仕組みです。
つまり、一本ずつの弦がすでに音階の中の一音一音になっていて、弦を押さえて音程を変える代わりに、弓の方を次々に狙った音の弦に移動させてメロディーを弾くという訳です。
音程を左手の指でとらなくて良いのは、弦楽器にしては画期的に楽なことです。
左手は楽器を持つお仕事だけなので、持ちやすくもあり、気軽に弾けそうです。
一方、弓の方は大忙しです。
擦弦楽器(弓で弾く弦楽器)の音を作るのは結局は弓なので、本気で良い音で弾こうと思えばかなり難しい面もあるのではないかと思いました。
そういう所も含めて、なかなか面白い楽器です。
弦が多いので頑丈で重そうに見えますが、中空の本体は意外に軽く、片手で楽に持てます。
どういう姿勢で弾くのが正しい弾き方なのかは知りませんが、私はやっぱりバイオリンのように肩のあたりに当てて弾くのがやりやすかったです。
音の特徴は、一音弾いた後に残る「フワーン」という残響。
バイオリンは一音弾き終わった時には、基本、弓は弦の上に止まっている状態です(持ち上げません)。それで弦の振動は止まり、楽器本体の響きのみが短時間残ります。そのため、すっきり素早く次の音に移行する事が可能です。
しかしプサルテリーは、一音ごとに、次の弦に動かすために弓を弦から離すのが必至な事もあり、弦が振動し続けます。それが、解放状態の他の弦とも共鳴し、複雑な響きが大きく残ります。素早い音の移行は苦手そうな反面、どうしても音と音の間にできてしまう弓の移動時間の隙間のためには、この響きは重要なのだろうと思います。
ちょうどピアノのペダルのような作用です。
もし、大きな残響を残したくない時には、弓を持ち上げる前に弦の上でしっかりと止める事により抑える事が可能かもしれません(それは実験してみなかったので推測ですが)。
どちらにしても、この「響き」を制する事が、この楽器を使いこなすポイントのように感じました。
このプサルテリーという楽器、指でつま弾くタイプのもの「弾奏プサルテリー」(プラックト・プサルテリー plucked psaltery)は14、15世紀頃にすでに使用されていたそうですが、今日拝見した弓で弾くタイプの「弓奏プサルテリー」(ボウド・プサルテリー bowed psaltery) の流行は20世紀に入ってから、という事で、そのへんも不思議というか、謎というか、なんとなく良くわからないので、さらに調べてみたいと思います。

冒頭に「楽器が訪問してくれた」と書きましたが、そう言いたくなるような、なんだか生き物みたいな味のある楽器でした。
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